数値シミュレーション技術

1.数値シミュレーションとは
    土砂移動現象(泥流・土石流)等の物理現象をモデル化し、モデルに基づく計算を行うことで、その現象を擬似的に表現する手法を数値シミュレーションといいます。
        ■モデル化
    実際の現象を、必要な部分だけ抜き出して簡略化・抽象化することと「モデル化」といいます。例えば,物体の運動を考える場合、運動の主体として体積の無い点を仮定し、回転や空気抵抗などを無視しても充分な精度が得られます。

2.なぜ土砂移動現象の数値シミュレーションが必要なのか
    土石流・泥流等の土砂移動現象は、地形の微妙な変化に伴い、自身が地形を改変しつつ複雑な流動を行います。また、誘因となる降雨の発生状況や火山噴火の規模等によって大きく結果が変わります。 現象のメカニズムの分析や対策施設の影響評価等を実施するためには、土砂の量だけを議論するのではなく、数値シミュレーションによる再現計算や特定の条件を与えた試行計算による評価を行うことが重要になります。

3.数値シミュレーション使用に関する留意点
    数値シミュレーションは飽くまで簡略化した現象を再現するものになります。実際に起こりうる土砂移動現象を正確に再現するためには、モデルの適用範囲と条件、及び実際の土砂移動現象に関する十分な経験と知識が必要です。

4.New-SASSとは
    砂防・地すべり技術センターが開発した二次元氾濫数値シミュレーションモデル(特許 第3960425号)であり以下の特徴を持ちます。
(1)砂防施設の効果を適切に評価できる
  ・砂防えん堤による堆砂、せき上げを定量的に算出可能
  ・施設直下の洗掘等を適切に表現可能
(2)従来以上に、高精度な解析結果を得ることができる
  ・通過する流量を高精度に算出可能
  ・計算と実現象での到達時間がほぼ一致
(3)解を安定に求めることができる
  ・適切な差分方法により、計算の異常終了がない
  ・地形が急変化する地点でも、異常な土砂の堆積がない
火山噴火による泥流など、大規模な土砂移動現象も高精度で影響範囲、到達時間などを求めることが可能である
 

大正泥流の再現計算
 

到達時間の分布 砂防堰堤配置時の縦断形状

 
5.New-SASSを用いたサービスについて
    New-SASSは扱いの難しい技術であり、土砂移動実態・数値計算について充分な知識を持った技術者が扱わないと精度が確保できないため、プログラム自体を販売・配布するということは行っておりません。 必要に応じて充分な知識と経験を持つ(一財)砂防・地すべり技術センター職員が計算を行うという形態をとっています。

6.数値シミュレーションに関する技術情報
    過去にSTC職員が執筆した数値シミュレーションに関する技術情報をまとめました。
遊砂地計画の検討における数値計算の活用について(機関誌sabo Vol.135)
流木の閉塞による被害想定一次元河床変動計算への組み込み(機関誌sabo Vol.133)
簡易な土砂・洪水氾濫シミュレーションについて(機関誌sabo Vol.128)
河床変動計算の精度と再現計算の重要性(機関誌sabo Vol.124)

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