研究レポート

STCが取り組む研究活動を紹介します。各研究に関するご相談はお問い合わせフォームにて受け付けています。

2025(令和7)年度自主研究レポート

砂防基本計画(100年計画)に関する研究

本研究は、砂防基本計画における短期・中長期土砂流出に関して体系的に整理し、事業期間100年程度を見据えた計画のあり方を検討するとともに、上流域に配置する施設の効果を定量的に評価するにあたっての課題整理と説明方法を検討した。
災害発生に結びついた短期・中長期土砂流出事例について、素因・誘因、被害形態・被害状況および災害対応等を整理し、対象流域の抽出を行った。対象流域は、直轄着手が比較的新しい流域、近い将来に直轄管理や県への移管が想定される流域、地震等による複合災害が想定される流域等に分類した上で、当面の整備および完了に向けた整備について流域特性を踏まえて課題を整理した。今後は、想定される災害シナリオの検討、土砂生産・流出ポテンシャルの低減および災害リスクの平準化を目的とした短期・中長期土砂流出対策を検討し、必要に応じて監視・観測計画を検討する。

渓流環境に配慮した砂防堰堤等に対する既設工法の実態

本研究は、令和4年度まで実施していた「透過型砂防堰堤の渓流環境に対する効果に関する研究」で確認された3つの課題点、①堰堤直下の落差、②スリット部の高速流、③底版や水叩き上の浅い水深の解消を目的に青森県内の既設堰堤に施されている工夫の実態について現地で確認した。現地調査では、階段式魚道等の一般的な対策ではない工夫を実施している堰堤を対象に調査を行った。釜屋沢川砂防堰堤、前田野目川1号砂防堰堤、大辺田貝沢堰堤、鳴沢川1号堰堤の4基を対象に実施した。大辺田貝沢堰堤はスリット部の両岸に粗石を配置している工夫をしており、それ以外の堰堤は底版上に底面に粗石を設置した水路を設置する工夫がなされていた。対策箇所の流速分布を調査した結果、大辺田貝沢堰堤では、スリット中央部の流速の最大220cm/sに対して、粗石付近では、ヨシノボリ類の突進速度10cm/s以下となっており、スリット内の流速分布に多様性が見られた。効果的な工夫の検討のため、引き続き文献調査や全国的な事例調査を実施する。

能登半島地震により発生した斜面災害の分布と地震力の関係性に関する研究

本研究では、令和6年能登半島地震により発生した地すべりや崩壊等、斜面災害の分布と地震力の関係性を明らかにすることを目的とした。地すべりや崩壊が多数発生した国道249号を沿いの南北約10km×東西約30kmの範囲を研究対象として、有限要素法による三次元地震応答解析を実施した。当該解析の結果として算出される最大水平加速度と最大剪断応力について、その分布と地すべり・崩壊が発生した位置等との関連性を分析した。その結果、地震時に発生した地すべり箇所では、地すべり末端部(平坦な場所や谷部)に作用する水平加速度の大きさに対して、地すべり頭部(尾根部)では60%程度大きな値を示す傾向があった。また、最大剪断応力は地すべり末端部に作用する値に対して尾根部に作用する値が約20%大きな値を示す傾向があった。これらの結果を指標とすれば、今後発生するであろう大規模地震時に、地すべりや崩壊が発生する可能性が示唆される範囲の予測に加え、当該斜面の概ねの変位量や安定度の評価が可能となると考える。

降雨分布を考慮した土砂流出解析システムの構築

本研究は、降雨流出解析の時空間分解能と精度を向上させるとともに、過去の降雨分布等を気象モデルにより推定し、降雨と崩壊発生等の対応関係を分析することで崩壊の発生や生産土砂量の算定方法を考案することを目的として実施したものである。
降雨流出解析については過年度に構築した降雨分布を考慮した流出解析ができるプログラムを基に、解析の補助プログラム開発、解析の機能追加、入力の機能追加を実施し、任意の流域での分布型降雨流出解析ができるシステム(プログラム群)を構築した。解析の補助プログラム開発に際しては、土層厚や透水係数等の広域の計測が困難な解析パラメータの設定が課題になることを想定し、Sce-ua法により、特定の降雨イベントに対してパラメータを最適化するツールを作成した。

土砂・洪水氾濫によるゾーニングに関する研究

本研究は土砂・洪水氾濫災害の被害が及ぶ範囲についてゾーニングを行うことにより、土砂・洪水氾濫に対する効果的なソフト・ハード対策につなげることを目的として実施した。
本年度は近年発生した土砂・洪水氾濫災害の内、氾濫範囲が整理され、かつ氾濫状況を空中写真や現地写真から確認できる事例を10事例収集した上で、降雨規模、氾濫の原因(トラブルスポットの影響)、氾濫範囲(縦断方向・横断方向)および既存ハザードとの関係等を整理した。また、上記の整理結果に基づき、氾濫開始点や氾濫範囲の傾向について降雨規模やトラブルスポットの影響を踏まえて分析を行った。氾濫の原因については、トラブルスポットの定義を明確にした上で、トラブルスポットに起因する氾濫発生状況を整理した。また、氾濫範囲については横断および縦断方向への広がり方を河道中央からの距離、比高差および河床勾配に着目し、地形による規制の影響について整理した。さらに、既存ハザード(土砂災害警戒区域、浸水想定区域)と土砂・洪水氾濫の実績氾濫範囲との位置関係を整理し、既存ハザードとの重複の有無について、確認した。

降灰後土石流の流出規模や計画流出土砂量に関する研究

本研究は、噴火後に想定される降灰後の土石流の発生メカニズムおよび過年度の研究を踏まえ、噴火対応火山砂防計画における降灰後の土石流の流出規模や計画流出土砂量の考え方や設定方法を検討するものである。
本年度は、現行の降灰後の土石流の流出規模や計画土砂量の設定方法および過去の降灰後の土石流の発生事例の分析を行った。過去に検討が行われた富士山を対象に、計画流出土砂量の設定方法についてレビューを行った。富士山の計画流出土砂量の設定方法に際し、流出率や計画降雨規模の考え方の基となった有珠山(1977噴火)、雲仙普賢岳(1990-1995噴火)、三宅島(2000年噴火)の発生事例を対象にレビューを行った。その結果、流域特性によって降灰後の土石流の発生・流出特性が変化すること、土石流の発生期間が噴火の期間、堆積する火山灰・火砕流堆積物の量により異なることが明らかとなった。こうした噴火特性や土砂移動特性は、降灰後の土石流の計画流出土砂量の設定における移動可能土砂量と運搬可能土砂量の算出に必要となることを踏まえ、引き続き降灰後の土石流の事例の追加分析を行い、火山灰の影響を考慮した土石流の発生・流動メカニズムの研究を行う。

砂防分野におけるEco-DRR推進に向けた研究

本研究は、土砂災害リスク低減に寄与する方策の一つとして、Eco-DRR(Ecosystem based Disaster Risk Reduction)の考え方を実装できないか検討するものである。本年度は、植生を基盤とした砂防の対策事例(①山腹工、②グリーンベルト、③砂防樹林帯)を対象にEco-DRRの視点から見たときの各対策事例に期待される定性的効果について整理を行った。各対策事例について(1)防災・減災、(2)環境、(3)地域社会、の各側面から見たときの期待される効果および課題(定量的評価、合意形成等)について整理を行った。それらを踏まえた上で、都市域・中山間地での各対策の適用性について検討を行った。①は都市域・中山間地ともに現在の荒廃地の分布状況から適用性は低いものと評価した。②はある程度の空間を確保可能な都市域では有効と考えられ、中山間地においては人口の少なさから維持管理面で課題があるものと推察される。③は都市域・中山間地ともに砂防構造物により、ある程度の安全度が担保された地域において有効と考えられる。今後の展望としては、上記①~③の対策が実施されている箇所の地域住民等を対象にアンケート調査等を実施し、これら対策効果の定量化を検討していくことが望まれる。

個別要素法を用いたコンクリートブロック堰堤の安定性照査手法に関する研究

本研究は、設計手法が確立していないコンクリートブロック砂防堰堤について、個別要素法(DEM)を用いて安定性照査手法の検討を行うものである。
本年度は、矩形ブロックに加え突起を有するブロックについて、土石流流体力と礫衝突を作用させた場合の破壊メカニズムの検討を行った。R6年度検討において、土石流流体力が作用した際に、堰堤モデルが外力に抵抗するブロック群と抵抗に寄与しないブロック群の2つに分離することを確認したが、それぞれを「抵抗躯体」、「残置躯体」と定義し、抵抗躯体を構成するブロック群が、突起の有無や突起の高さで変化することが確認できた。また、外力が作用した時の限界流速については、矩形ブロックに比べ突起ブロックの方が大きく、突起高の違いについては、連続的に作用する土石流流体力の場合は突起高に比例して限界流速が大きくなり、礫衝突の場合は、衝突によって突起を介して下段ブロックに荷重が伝達する過程で回転モーメントが発生するが、その大きさも突起高に比例することから、限界流速が小さくなる傾向となった。

シミュレーションに関する技術開発及び操作性に関する研究

本研究は、シミュレーション技術を用いた新規業務の提案や既存業務の生産性改善のため、新規プログラム開発および既存シミュレーション技術の改良についての研究を行うものである。今年度は、昨年度pythonで開発した一次元河床変動計算プログラムをC言語に移植し高速化を図るとともに、複数の土石流モデルとフェーズシフトモデルとを組み合わせた単純斜面での計算により、底面抵抗や侵食堆積傾向へ与える影響について研究した。また都道府県での土砂・洪水氾濫検討のために一部簡略化したプログラムも別途作成し、当財団のホームページを通じて募集した数十社に対して配布し、さまざまな実地形で試算を行うことにより今後のプログラム開発や操作性の向上についての課題を収集整理した。

令和7年度 融雪型火山泥流への応用に向けた火砕流モデルの高度化

本研究では、火砕流の到達距離予測や融雪型火山泥流への質量・熱輸送予測の信頼性向上に向け、二層浅水流型火砕流モデル(Shimizu et al., 2023, Geophys. Res. Lett., 50, e2023GL104616)について、妥当性確認に先立つ前段階としてモデル特性の評価・整理を行った。火砕流は地表への堆積に加え、流動中に軽くなり二次的な噴煙柱(灰神楽)として離陸する過程も併せ持ち、到達距離は両過程の質量分配に強く左右される。定常解に基づくパラメータスタディにより、その質量分配が「堆積効果」と「周囲大気流入・熱膨張効果」の競合で整理でき、結果がシグモイド型のスケーリング則に従うことを明らかにした。これにより、火砕流到達距離予測の信頼性向上に向け、質量分配過程を適切に捉える重要性を示した。さらに、噴出物総量を火砕流堆積物量とみなして噴火条件を逆算する際に生じ得る誤差を、灰神楽への移行分を考慮して定量化する見通しを得た。火砕流堆積物と広域テフラの両情報を用いた条件設定・感度分析の枠組みとして、シナリオ設定やハザードマップ作成時の不確かさ整理、観測データ整備の優先順位付けにも資する成果と言える。

ネット系構造物の長期耐久性に関する研究

本調査は、ネット系砂防構造物の長期供用実態を把握し、恒久構造物としての適用可能性を検討することを目的としている。近年、強靭ワイヤーネットを用いた砂防構造物は、仮設的な応急対策としての利用が増加しているが、長期耐久性に関する知見不足から恒久利用は進んでいない。そこで、供用期間10~30年程度の国内事例を対象に現地調査を実施し、リングネットやワイヤー、支柱など各部材の損傷や腐食状況を近接目視により確認した。その結果、落石防護柵では長期間にわたり大きな損傷や腐食は認められず、機能維持が確認された。一方、流水環境下では軽微な腐食が見られ、環境条件に応じた対策の必要性が示唆された。以上より、適切な条件設定と防食対策を講じることで、ネット系砂防構造物は恒久構造物として活用できる可能性があり、今後はさらなる事例蓄積と性能評価が重要となる。

鋼製砂防構造物の長期耐久性に関する研究

本研究では、長期間供用された鋼製砂防構造物の摩耗損傷、腐食についての実態調査を行い、その調査結果の整理を行った。鋼製砂防構造物は、昭和40年代に開発され、これまで約6,000基以上の施工実績があるが、常時流水や中小出水などによる流砂や小礫衝突による摩耗損傷については、これまで実態調査が行われておらず、十分な知見が得られていない。そこで、経過年数の長い堰堤(概ね40年以上)を対象に、流砂や小礫衝突による摩耗損傷を調査し、鋼製砂防構造物の耐摩耗性等の長期耐久性の実態把握を行った。
まず、データベースから調査候補を抽出し、現地調査を行う対象を5~10基程度選定した。調査地は供用期間が概ね40年以上の堰堤が集中している有珠山周辺を選定した。対象堰堤の調査を実施し、腐食傾向などの調査結果をとりまとめた。腐食傾向の把握のため、今後も5年間隔等の定期的な経過観察が必要と考えられる。

透過性を有する応急対策技術の開発検討

本研究は、土石流・流木対策として活用可能な新しい応急対策技術を開発することを目的として実施した。本年度は、過年度に実施した水理模型実験の結果を踏まえ、応急対策技術としての要求性能および実現性を考慮して以下に関する検討を行った。
・模型を用いた構造仕様の検討
・FEM解析による耐衝撃性の検討
・組立方法に関する検討
・施工性、経済性等の検討
これらの検討により、本技術が一定の耐衝撃性を有することや、経済性を考慮した設置方法を確認した。また、本技術の施工方法や構造的な課題を整理した。

事業概要 トップ
研究レポート

研究レポート